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閉業した店をレビューする/福いち(帯広市)

とかちみっち

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 これほどまでに、こころに強い衝撃を受けたことはあっただろうか。ネット検索で表示された「福いち 閉業」の文字に、わたしは狼狽をあらわにした。ひとりで思わず、「えー!?!?!?」と叫んでいたほどだ。

 そんなことを調べるつもりではなかっただけに、予想だにしない言葉に、まさに自分の目を疑う始末だった。すぐさま詳しく検索すると、たしかにいくつかのサイトで「閉業」と掲載されていた。信じられない。何があったのか。

 福いちは帯広市にある和菓子屋で、わたしがこの世で一番に好きな餡の団子を作る店である。有名店も含め、様々な店の団子を食しているが、ここを超えるものには未だ出合ったことがない。

 まずはその団子の絶妙な柔らかさ、食感が何とも言えず抜群である。表面から深部に至るまで一定の柔らかさがあり、口に含んだとき、歯を使わずとも、上顎と舌で力をかけずにふんわりとつぶせる弾力である。さらに、上品な小豆の甘さが際立つ餡子は、何本食べても飽きがこない味だ。実際、わたしが何かの自分の祝いに20本買ってきて、すべて平らげ、まだ食べたいと思うほどであった。無限だんごである。

 もともとは、帯広の街中に「お多福」という店があり、店主の高齢化とともに閉めることになった際、働いていた人が味を引き継いで開店した店であった。子供の頃からお多福の味が大好きだったわたしは、それが閉店すると聞いたときに愕然としたのを覚えている。高校生のころには下校の途中によく寄っていたので、閉店の日が近づいたときも、それを惜しむひとたちと一緒に並び、二度と楽しめなくなる味を噛み締めたものだった。

 いまでも、わたしの親が頻繁に持ち出す思い出話がある。東北へ家族旅行に行った際、有名な観光地の団子屋で、わざわざ並んでまで買ってきたのに、車で待っていた当時小学生だったわたしたち兄弟が、いくつか食べただけで、「もういらない」と残したという話だ。「大変だったのに」とよく文句を言われるが、お多福の味で育ってしまったのが原因である。わたしたちは悪くない。

 夏休みの宿題をちゃんとやり終えたらご褒美に何か買ってあげると母に言われ、「お多福の団子!」と即答したことがある。小学校3、4年生のころだろうか。

 溜まりに溜まった宿題を放置している息子に危機を覚えたのだろう。餌をぶら下げ、どうにかしようと考えたのだ。朝、「わかった。今日、買ってくるから、ちゃんと宿題やるんだよ」と念を押し、母は仕事へと向かった。

 たしか、午前中の二、三十分はまじめに鉛筆を持って宿題に向かっていた気がする。よくなかったのは、天気が良かったことと、友人が、「みち、あそぼー!」と家を訪ねてきたことである。

 ちょっとだけなら、という気持ちで出かけたのが失敗だった。今でも、「5分だけ、5分だけ昼寝させて……zzz」と妻に伝えて二時間ほど意識を失ってしまうことがあるが、それと同じで、気がつけば太陽がいつの間にかさようならしていた。

 宿題と約束のことなど忘れ、鼻歌を歌いながら家に帰ると、雷神と化した般若がいた。

كلمات غاضبة!!!

 と、雷が落ちたことは言うまでもない。だが、団子はおいしく頂いた。

 そんな、成長のそばにあったお多福の味が終わってしまうと知ったとき、本当に残念な気持ちが溢れた。だが、味を引き継いだ店が開店すると聞いたときは、身体が浮かんばかりの幸福な気持ちで乱舞した。

 帯広の中心部からは外れてしまったが、時間をかけても食べに行きたい味であり、地元を離れてからも、帰省のたびにお店を訪れていたものだった。

 十勝のおすすめを訊ねられたり、これから帯広にいく、または住むという人には必ず薦めていた店だった。ぜひとも皆に一度は食べてほしい味だった。

 その、わたしの救世主とも言える福いちが、まさかの閉店だという。どうにも信じられず、十勝に住む家族や友人に訊いてみたが、確かな情報をもつ者はいなかった。

 もしかしたら何かの間違いではないか——そう一縷の望みをかけ、お店に電話してみた。だが、「この番号は現在使われておりません」という無情な音声が聞こえてくるだけだった。

 諦めの悪いわたしは、そのあと観光コンベンション協会に電話し、真相を確認した。すると、詳細はわからないが、確かに2020年の12月1日に閉店したとの回答を得た。押し寄せる諦めの気持ちと共に、もうあの味は食べられないのだという現実が、わたしの心を涙で満たした。

 実に、実に、残念である。

 もう二度と食べられない、しかも、最後にその想いをもって味を噛み締めることができなかったことが悔やまれる。だが、閉業に至るには様々な事情があったのだろう。それについては納得するしかない。むしろ、お多福の味を引き継いでくれて、その後の二十年以上にわたりわたしたちを楽しませてくれて、感謝しかない。


 長い間、おつかれさまでした。ありがとうございました。あなた方の店の味と共に人生を過ごせて幸せでした。  ただ、いよいよ食べたくなってがまんが限界にきたときは、探偵ナイトスクープに、「あの味が食べたいから何とかしてほしい」と依頼するかもしれません。そのときはすみません。あらかじめお断りさせていただきます。どうぞご容赦ください。

 本当の本当に、ありがとうございました! うまかったです!

味 :☆☆☆☆☆
値 段:☆☆☆☆☆
思い出:☆☆☆☆☆

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私も投稿者さんと全く同じ気持ちです。私は今も、他のお店のお団子は食べられません。あの柔らかさ、団子自体に甘みがないのでくどくない。遠く離れた街に住むようになってからも、福いちのお団子を買うためだけに、帯広駅からタクシーに乗って行ったこともあります。もう食べられないと知ったとき、本

えっ
聚楽も?
寂しいです!

福いちの団子は、最高です。お多福の時代からの味は、忘れません。青春の想い出です。帯広に行くと必ず買って帰ります。
店の再開を願っています。

とても悲しいです。どなたかあの味を引き継いで、お店開いてください。お願いします!

たん吉以来の衝撃
聚楽も閉店したし寂しいですね。。。

私も今日春駒通り走って驚きネット検索し、閉業と知り落胆しましま。
どこの団子屋さんはプラの容器に団子を入れていますがふくいちは違っていて、新鮮さを感じた‼️
もう、あの包装が見られない、あの味が楽しめないのはふくいちファンの一人として寂しい。

福いちがもうないのですか?崩れ落ちる私。最近行ってなかった自分を責めてしまいました。

ここはアメーバの芸能人のコメ欄ですか?
アメーバはバイト雇ってアンチ消すから賞賛コメしかないんだよね。

何にだってアンチはいるし、ケチつけられたくなきゃ絶対褒めてくれるお友達と仲良くやってなさい。

人目気になるなら止めちゃえば?

コメ消された。
ちっさいなあ。

今回帰省して久しぶりに食べたいと思っていたら閉店していたとは‥
残念でなりません。

お多福店内で食べるの大好きでした。
蛇口から直にほうじ茶が驚きでした。笑

薄茶色の紙に包まった串団子。団子を取り終わった後に、その紙に残ったいろんな味の餡やタレをスプーンですくうのが楽しみだった。もう食べれないのか(涙)byタックルベリー

そうかぁ~もう食べられないのか(涙)

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