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ジェイエースに会えない、ひとでなし

荒草

荒草

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ばんえい競馬は2018年度のシーズンが開幕、次々とデビューを迎える期待の2歳馬たち。
注目の新馬に会いに行く、ノンフィクションひとでなしレポート。

5月6日(日) 注目の新馬

遡ること6週間、H氏からメッセージ。

「今日のばんえい第5レースを見ろ」
「ジェイエースが凄い」


言われるがまま結果を確認すると、デビュー戦を“もの凄いタイム”で勝利した馬がいた。それが『ジェイエース』。

能検(デビュー馬の能力検査)の結果を並べて「ジェイエースに注目」と以前から熱く語っていたH氏は、首都圏からネットで馬券を購入するばんえい競馬ファンのひとり。
地元帯広に帰省したかと思えば、『オレノココロ』号の“記念蹄鉄(ていてつ)”を購入し自慢してくるような猛者である。

ある日オークションサイトで全く同じ記念蹄鉄が(結構良い値で)売りに出されているのを発見。H氏に問い詰めたところ「目の前にある」「売らない」とお叱りの言葉とともに証拠写真が送られてきた。

H氏らしい証拠写真に、吹き出す。
私もいつか、記念蹄鉄を購入するような日がやって来るのだろうか。

H氏の推し馬、『ジェイエース』に会いに行こう。
首都圏在住のばんえい競馬ファンには気軽にできないミッションに愉悦を覚えた。

5月13日(日) 消えたレース

幸い1週後にジェイエースの出走レースが組まれていた。
H氏にジェイエースの写真を送ると約束して当日を迎える。

出走時刻を確認。パドック(レース直前に競走馬をお披露目する場所)を撮影するため前のレース出走時間には競馬場へ到着する必要がある。

──ない。

ジェイエースの出走レースがなくなっている。
1レース減ると案内されていたが、まさかジェイエースの出走レースだったとは。

元々「一目観られたら」くらいの気持ちであったが、叶わないとなると無性に残念。
Twitterでは「他の馬がジェイエースとのレースを避けた」という冗談(?)も囁かれ、新馬への期待は高まるばかり。

6月2日(土) 帯広競馬場へ

さらに3週間、待ちに待ったジェイエースの出走日。早めに競馬場へ到着したことをH氏に報告する。

ジェイエースの単勝を100円購入。
当たっても130円、換金しない記念馬券。

前のレースはスタート直前、盛り上がりを見せる競馬場内。このレースも観たかったがジェイエース撮影に備えパドックに張り付く。いよいよ対面である。


しかし ──

携帯が鳴り、祖母が倒れ救急車で運ばれたとの一報。
たくさんいる親戚がたまたま全員十勝に不在らしく「すぐ病院行って」とのこと。

「もう少しあとじゃダメ?」

自分の口から出た、驚愕の一言。「最低だ、オレって。」
我に返り、パドックを背に病院へ向かう。

救急病棟で元気な祖母の姿を見てホッと一安心、幸い何事もなく即帰宅できる様子。少し疲れが出ただけだって。とりあえず祖母に、どの親戚より一番に駆け付けたのが自分であることをアピール。何度も。
ひとでなし発言で失った親戚内の信用を取り戻すための根回しだ。

帰り際、H氏からジェイエースが2着だったと連絡が入った。うーむ“当たってこそ”の記念馬券なのに。

6月17日(日) リベンジ

さらに2週間、「ジェイエース」出走日。レースも取り消されていないし、祖母も元気。

しかし前日…私の体調が優れない。
頭痛と、咳と。婆ちゃんの呪いか。

朝になると喉は腫れ、猛烈な倦怠感が全身を襲う。熱は無さそうだが怖くて測ることができない。
ジェイエースのパドックを撮影するには16時前に競馬場へ到着すればよい。
薬を服用し、祈るように眠る。昼にはきっと元気になるはず。

やはり願い叶わず…目を覚ますと関節がギシギシと痛み、悪寒、とにかく全身がダルい。

しかたがない、遠くの川は諦めて近くの川に入る。

そう、釣りへ行ったのだ。

川を見ると、やはり脳から何かが分泌され身体の不調は感じられなくなった。
竿を少し振るだけ…のつもりが良型がたくさん釣れる状況に、我を忘れて川をどんどん遡行。

気が付けば30分前。急にズシリと重くなる身体、車まで走る。

競馬場に到着。駐車場から直前のレースがゴール間近なのが見える。
パドックまで向かう途中、また携帯が鳴るがもう出ない。兄からだし、どうせたいした用事ではない。

ギリギリ、パドックに間に合う

H氏から他の馬の写真も頼まれていたのでバシバシと撮影する。スマホだけど。

[1番]前走でジェイエースを破った『メムロボブサップ』はパドックで大暴れ。
闘争心は頼もしいが3番人気に応えられるか。

[2番]暴れるメムロボブサップに明らかにイラついている『トマランサジェット』。
両の後ろ脚を何度も蹴り上げる大迫力。

[3番]『キタカゼ』は出走メンバーの中で過去3走してる唯一の馬(他は2走)。
騎乗する西謙一騎手のユニフォームは3番の赤によく似合う。

[4番]遅れてパドック入りした1番人気『ジェイエース』。地面を蹴る脚がしっかりしている。
騎乗はばんえい競馬のトップジョッキー鈴木恵介騎手。凛々しい。

[5番]『サカノカネマル』は額の模様「流星(?)」がお気に入り。
10頭中10番人気であるが工藤篤騎手の騎乗馬はいつだって無視できない。

[6番]荒れるパドックでもマイペースで頼もしい『サカノウィナー』。
船山蔵人騎手は現役ジョッキーの中で唯一の左利き(たしか)。馬の調子を変えることができると言われ、毎回頭を悩ませる。

[7番]ポケモントレーナー(!?)に手綱を引かれる『ヒメトラクイーン』。
持ち時計はなかなかで、騎手が乗り替わり。気になる存在である。

[8番]『ハイトップフーガ』はカメラ目線でサービス精神旺盛。
5番人気であるが牝馬3頭(6、7、8番)の中では一番高い。写真のとおり美人。

[9番]注目の2番人気『ギンノダイマオー』。まるで黒王の風格。
なんとH氏は推し馬ジェイエースより本命に挙げた。イケメンなので人気馬になるだろう。

[10番]4番人気の『カツヒーロー』は(1、4、9番の)三つ巴と言われた本レースに食い込めるか。
大外であるがまだ4レース目。前2走も安定したタイムである。

せっかくなので馬券買う

H氏に写真を送りつけ、ミッションコンプリート。
またもジェイエースの単勝を100円購入。当たっても190円、換金しない記念馬券。

急に疲れが襲い、座れる場所を探す。

久々に(勝負)馬券も買ってみようか、財布を覗くと1,000円札のみ。
年齢相応には程遠い。

考えるのもツラかったので、適当に、三連複5頭ボックスで100円10通り購入。

組み合わせ次第では買うに値しないオッズも含まれていたが面倒なのでそのまま。

レーススタート!!

山場である第二障害後ろに陣取る。スタートからアッという間にばんえいポイントまで駆け抜ける新馬たち。

一番最初に仕掛けたのは「ジェイエース」!
鈴木恵介騎手の手綱さばきは、中田英寿のキラーパスのような鋭さがある。


「あぁああッ!!」

エキサイティングゾーンの観客から悲鳴が上がる。
一番人気「ジェイエース」が第二障害頂上で脚を止めたのだ。

↑ゴール前の直線。1-2着はこの2頭で決まりそう。

↑後続の3位争い。ジェイエースの姿が…見当たらない。

結局、期待の新馬「ジェイエース」は10頭中8着という少し残念な成績。
しかし人気馬が勝つために“仕掛けて破れる”という展開は、ばんえい競馬を語る上で外せない面白要素のひとつなのだからしかたない。

着順が確定!!

1着 [9番]ギンノダイマオー
2着 [1番]メムロボブサップ
3着 [7番]ヒメトラクイーン

 
おや!?
 


当たった。


1番人気が絡まなかったので配当も高く、5,880円(!)が払い戻し。
1,100円使っているのでプラス4,780円。

6週間かけたジェイエースとの物語は予想外の結末で幕を下ろす。

すでに体調の悪さも忘れ足取りは軽い。
本日出走した新馬たちがより大きな舞台で活躍することを祈りながら競馬場を後にするのであった。

おまけ

帰りに売店に寄る。

3,600円也。
宵越しの金は持たない。


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画像で、サカノカネマル強そう!と思ったから、競馬向いてないなと思いました。

「なぜ、そこで川に?」なぜ?が多すぎて腹痛に耐えている。

大迫半端ないって!!!

H氏のハマり具合といったら・・・

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