トカチを舞台として繰り広げられる、小さな主人公「チーズ君」と、その相棒「ブゥ子」のハートフル冒険劇場。はじまるよっ!はじまるよっ!ドンドンドンドン!はじまるよったら はじまるよっ!ポテチとコーラを準備してね。
それでは、ごゆっくりお楽しみください〜ドンドンドンドン!
ふん ふん ふふふん~♪
ふんんふ~♪ ふんっ ふんっ!(ばぅっ ばぅっ!)
おやっ?愉快な鼻唄が聴こえてきましたよ。
チーズ君とブゥ子は大の仲良し。
今日も一人前の「チーズ」になるため旅をしています。
「うぅん、今日は素敵なところをたくさん歩いたなぁ。ナイタイ高原牧場かぁ、広かったなぁ。」
チーズ君とブゥ子はお化けキノコの上で一休み。
たくさん歩いて疲れたのでしょう。
ブゥ子は「ぶぅぶぅ」いびきをかいて寝てしまいました。
「おっといけない、ブゥ子。そろそろご飯にしようよ。」
「あれ !?あれれれ!!?」
ブゥ子を見てチーズ君はカマンベールのように頭が真っ白になりました。
たくさん歩いて…たくさんお腹が空いた。
ブゥ子はリュックの中のごちそうを全部食べてしまったのです。
「くぅ~ん」
チーズ君のごちそうまで食べてしまったブゥ子は(ごめんね)とひと鳴き。
でも、お腹が空いてしかたないチーズ君は許してくれません。
「もう、いじわるブゥ子とは遊ばないからなっ!!」
そのままふてくされて寝てしまいました。
「ふぅうあ、おはよーブゥ子。」
朝になって目をこするチーズ君に返事はありません。
「あれ?ブゥ子!ブゥ子~!」
隣で寝てるはずのブゥ子の姿が見えません。
同時にペコペコお腹のおかげで昨日のケンカを思い出します。
「勝手にいなくなるなんて、とんでもないブゥ子だっ!」
チーズ君はどうしても文句を言ってやりたくてブゥ子をさがし始めました。
チーズ君は怒っていました。
「ねぇ、サカナ君。ここにブゥ子っていう、食いしん坊の犬は来なかったかい?」
キラキラ光る小川で水浴びをしていたサカナは言いました。
「そんな食いしん坊で、欲張りな犬は来なかったぜ」
まだブゥ子は見つかりません。
チーズ君は怒っていました
「ねぇ、カタツムリさんたち。ここにブゥ子っていう食いしん坊で、欲張りな犬は来なかったかい?」
ふわふわの草のベッドで昼寝をしていたカタツムリの親子は言いました。
「そんな食いしん坊で、欲張りで、いじわるな犬は見なかったよぅ」
まだブゥ子は見つかりません。
チーズ君は怒っていました。
「ねぇ、ヘビさん。ここにブゥ子っていう食いしん坊で、欲張りで、いじわるな犬は来なかったかい?」
ブラブラ蔓の中で何かを待っていたヘビは言いました。
「そんな食いしん坊で、欲張りで、いじわるで、自分勝手な犬は…
まだ食べてないなぁ!
…ところでお前、旨そうだな(ジュルリ)」
「ひゃ ひゃああ~!!」
チーズ君はブルーチーズのように青くなって逃げ出しました。
ヒュ~…(風の音)
まだチーズ君は怒っていました。
でもそれはブゥ子に怒っているわけではありませんでした。
サカナやカタツムリ、そしてヘビからブゥ子の悪口を聞いて、とてもイヤな気持ちになったのです。
チーズ君は自分もブゥ子の悪口を言ってしまったことを後悔していました。
「どうしてあんなことを言ってしまったんだろう…」
ブゥ子の顔を思い出して胸にポッカリ穴の開いたチーズ君は、まるでエメンタールみたい。
「ブゥ子 !ブゥ子やぁい~!!」
もうチーズ君は怒っていませんでした。
お腹が空いて今にも倒れそうでしたがブゥ子に会いたい、謝りたいという一心でチーズ君は叫びました。
「ブゥ子!ブゥ子やぁい~!!」
空にはもう星が輝いています。冷える夜なのにチーズ君は汗だくになってブゥ子をさがし続けます。
そのときでした。
「ばうっ ばぅっ!!」
「ぶ、ブゥ子っ!!」
チーズ君が通った道を、ブゥ子がドスンドスンと飛び跳ねてきました。
よく見るとチーズ君が通ったあとにチーズでできた汗が飛び散っています。
ブゥ子は大好物のチーズの匂いを追いかけて来たのです。
「ごめんなブゥ子。いじわるなんかしてごめんなブゥ子。悪口たくさん言って!」
やっと言うことができました。
大好物のチーズでできたチーズ君の涙をペロリと舐めて、ブゥ子はなんだか嬉しそう。
お腹はペコペコでしたが、ブゥ子に会うことができてチーズ君もなんだか嬉しそう。
「ばう ばう」
ブゥ子は持ってきたキノコを一本差し出しました。
夜空と同じ、紫色に輝くとっても美味しそうな?キノコです。
「わぁっ、ブゥ子。ボクにくれるために採ってきてくれたんだね!」
今度はチーズ君とブゥ子、二人で仲良くキノコを半分こにして食べました。
ペコペコお腹には全然足りなかったけど、なんだかお腹がいっぱいになったチーズ君でした。
その夜、森には二人の幸せそうな笑い声が響き渡っていました。
…朝まで。
この作品は、普段見落としがちで何気ない風景を少し小さな視点で見ることで、壮大で面白く、かつ奇妙な世界観を表現したデジタル紙芝居ともいうべき作品です。テーマは「友情」※隠れテーマは「毒キノコを食べてはいけません!」。是非、お子様とご一緒に楽しんでくだされば幸いです。
撮影舞台/緑ヶ丘公園・ナイタイ高原牧場