カーリングシューズ
様々なスポーツで、選手達はその競技に合ったシューズをはいています。野球や陸上、サッカーのスパイクシューズ、マラソンなどのランニングシューズ、バスケットボールシューズなど、それぞれの競技に専用シューズが存在するのは、皆さんもご存知かと思います。そんな数ある専用シューズの中で、一番個性的なのがカーリングシューズかもしれません。
私も、初めてカーリングを体験したときに、まずシューズに驚きました。一般のシューズは、それぞれ個性はあっても、左右はほぼ同じだと思います。でも、カーリングは左右が全く違う形態になっているのです。
下の写真を見てもらえば、よく分かると思いますが、カーリングシューズは、片方の足の裏側が、すべりやすいツルツルの素材でできていて、もう片方の裏側は、ゴムのような素材ですべらないようになっています。
たとえば、右投げの選手であれば左足にすべるシューズ、左投げの人は右足にすべるシューズを履きます。すべるほうの靴底は、テフロンやステンレススチールなど摩擦の少ない材質でできています。
一方、すべらないほうの靴底は、氷をしっかりつかむことでき、安全でバランスが保てる軟質なゴムなどの材質です。
私は、40年ほどのカーリング人生で、様々な靴をはいてきましたが、滑る方の素材はテフロンが一番マッチしているな~と感じています。ステンレスの靴底も持っているのですが、感触がしっくりこなくて、通常はテフロンの靴底のシューズをはいています。
ステンレスは滑りは問題ないのですが、ちょっと氷との接触音が気になるのと、氷と喧嘩しているような感触があるんです。それは、気のせいなのかもしれませんが、私の感性には合いません。おそらく靴の作りだとおもうのですが、日本のメーカーがつくれば、それらの問題を解消するものができるとは思います。
ただ、ステレスの靴底は、見た目はかっこいいいです。シルバー好きのわたしにとっては、見た目でその靴をゲットしたようなものです。
あと、テフロンを使用する場合、そのテフロンの厚さが重要です。私がカーリングを始めた頃は、1mmのものがけっこうあったんですが、現在は3mm以上が一般的だと思います。私は5mmの厚さのテフロンを使っていますが、厚い方が滑りもよくなると言われています。
だだし、厚さは厚ければいいというものでもありません。テフロンはけっこう重たいので、厚くするとシューズが重たくなります。ですから、個々人自分にあった厚さのシューズを選んで履いていると思います。私がいままで見た中では、テフロンの厚さは8mm以下ですね。8mmだとそれなりに重たいので、テフロンの真ん中を抜いたタイプのものを使用していました。
テフロンの貼り方は、全面に貼るものもあれば、2面に分離してはるもの、中をくりぬくモノ、最近ではドットタイプのものなど、いろいろあります。(下の写真を参照)
あと、すべらない方の靴底は、アンチスライダーといって、みなさん柔らかめのゴムを使用していると思います。で、このゴムがくせ者で、競技の中でゴミを拾うというのは、ほとんどがこのゴムの破片です。ちいさいゴムの切れ端なんですが、これがストーンの底に引っかかって、ストーンの進行を変えてしまいます。
大事な場面でこのゴミを拾うと、試合に大きなダメージを与えますので、特にリード、セカンドのスイーパーは、気を使っています。
ちなみに私は、以前は、ASHAMというメーカーのアンチスライダーを使っていました。ちょっと厚みがあって、とてもしっくりいくので、インターネットでカナダのショップからまとめ買いしていました。
ただ、今は、そのようなゴムをつかっていなくて、とても丈夫なスポンジ状のモノを使用しています。この靴底は、日本の神栄化工という会社のものなんですが、特別に提供いただき、ただいま試用中です。まったく問題なくて、個人的にはとても気にいっています。おそらく、この製品の靴底は、世界で私だけだと思います。あっ、SC軽井沢の山口剛史くんにも紹介しましたので、ひょっとした剛史くんも使っているかもしれません。
さきほど、日本のメーカーがつくればという話をしましたが、実はカーリングシューズはカナダのメーカーがつくったものがほとんどです。日本のトップ選手がはいているシューズもカナダ製だと思います。かつては、日本のメーカーもテスト的に販売したこともあるのですが、カーリングをよく知らなかったこともあり、品質がイマイチで、すぐ消えました。
で、そのカーリングシューズのレベルなんですが、もちろんオリンピック等で使用されているので、しっかりしているのですが、私はとても不満なのです。なにが不満かといえば、一番はデザインです。
みなさん、オリンピックや世界選手権の映像を見ていると思いますが、シューズはほとんどが黒だと思います。最近でこそ、ちょっとカラフルなものもでてきてはいますが、他のスポーツのシューズに比べると、ま~地味です。
さらに、カナダ製ですから、こういっては失礼ですが、ちょっとシューズとしてのできあがりも、あれ?と思うことがあるんです。これが、私は我慢できませんでした。
カーリング人口がもっとあれば、アシックスさんやミズノさんあたりが、もっとレベルのあるシューズをつくれると思うのですが、やはりビジネスにならないとメーカーとしてはやれないですよね。
そこで私は考えました。それなら自分で作ってしまえ~!!!ということで、実は私が使用しているシューズは、ほとんどが自分で作ったオリジナルです。えっ、靴ってつくれるの?と思う方もいると思いますが、実は作れるんです。
カーリングシューズの一番の特殊性は、その靴底です。ですから、既存のシューズでいいものがあれば、それを改造して作ることが可能なんです。スニーカー等でいいデザインのものがあれば、それにテフロンとアンチスライダーの靴底に作りかえてしまえばOKです。
私は、一時、このカーリングシューズづくりにハマって、1ヵ月に4~5足作っていました。テフロン素材は日本のメーカーさんに頼んで、50cm×50cm、厚さ5mmのものをゲットしました。テフロンは、どんな強い接着剤でも接着させることができないので、必ず接着面は薬品で焼いてもらったモノ購入していました。この大きさで、8足分ほどのシューズを賄うことができます。
シューズを作っているときは、精神的に集中するので、ゾーンの世界に入ったような気持ちよさがあります。それで、いろんなシューズで作り続け、その数は40足を超えました。中にはとても満足いく出来で、もったいなくて1度も氷の上で履いていないシューズもあります。(笑)
ほとんどのシューズは、氷の上で試しましたが、実際に試合で使えるのは、5~6足かな~?テフロンやアンチスライダーは同じなんだけど、やはりシューズによって全然違うんですよね。
自分でシューズをつくってみて、いろんなことを学びました。例えば、どうしても、テフロンやアンチの素材などに意識がいくのですが、、アンチスライダーを貼ったシューズ(右投げの選手であれば、右足のシューズ)のつま先がとても重要なことも知りました。つま先は、ストーンを投げ、滑って行く際に氷にもろ接します。ですから、この面をどう対処するかが、微妙なんだけど大切なんです。カナダでは「トゥーコート」という靴のつま先に塗る素材もありますが、最終的に私は、その面に厚さ1mmのテフロンを貼って対応しています。
オリジナルのシューズを使用して公式戦に出ている選手は少ないんですが、平昌オリンピックの男子で金メダルをとったアメリカのチームは、みなさんオリジナルのシューズを履いていたと思います。私は6回の世界選手権全て、オリジナルのシューズで出場しています。
ということで、今回は私が製作した、オリジナルカーリングシューズの一部を紹介しますね。
ドルチェ&ガッバーナバージョン
このシューズは、試し履きはしましたが、実際の試合等では使用したことがありません。私がもっているカーリングシューズの中では、一番の高級品です。迷彩柄が好きなので、悩みつつもゲットしてしまいました。
ナイキAIRバージョン
本来は女性用のスニーカーです。シルバーのドットがよかったし、25cmのものがあったので手に入れました。当初は幅が狭いので、試合中足がつったりしましたが、シューズストレッチャーで調整して履けるようになりました。公式戦でも使っています。
ナイキ AIRMAX’95バージョン
あの伝説のAIRMAX’95をカーリングシューズにしました。世界でただひとつのAIRMAX’95です。スニーカーとして使用するか、カーリングシューズとして使用するか悩みましたが、思い切ってカーリング用に改造しました。これはもったいなくて、ほとんど履いたことがありません。観賞用ですね。
アディダス ラスタカラーバージョン
赤、黄、緑のラスタカラーの組合せが好きなので、探し回って手に入れました。アディダスのスーパースターシリーズのスニーカーは靴先が硬くてカーリングシューズに向いているので、沢山持っているのですが、これがいちばん好きです。これもほとんど履いたことがありませんが、1度、ユニフォームもラスタ、頭もドレッドヘアーの帽子でやったことがあります。私は若ければ、ドレッドヘアーで公式戦に出ていたと思います。SPX バージョン
ちょっと使い込んだ感じですが、これが私の勝負シューズです。私がもっているカーリングシューズの中で、最もマッチしているシューズです。世界選手権をはじめ、大事な大会は、ほとんどこのシューズでやりました。海外の選手にもけっこう評判でした。メタリックシルバーとヒョウ柄がなんともファンキーで、お気に入りです〜。
と5足ほど紹介しましたが、これが私が考えるカーリングシューズへの思いです。少しでもその思いが、みなさんに伝われば、嬉しいです。
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