チーム名
今回は、カーリングのチーム名の話をしたいと思います。このテーマに関しても、けっして現状に対する批判ではありません。あくまでも私の思いを伝えたいということですので、読んでいただければ嬉しいです。
カーリングのチーム名は、オープン大会は自由ですが、公式戦は自由につけることができません。JCA(日本カーリング協会)の規定があります。どのようになっているかというと、JCA競技者ユニフォーム規定(2)背文字表示基準 C チーム名 にはこのように書かれています。
チーム名には、次の登録名が使用できる。
❶ 選手名(「チーム○○(代表者の苗字)」)
但し、ミックスダブルスについては、「チーム○○・○○」や「○○・○○ペア」などの苗字を使用 した連名表記を認める(標記順は「女性・男性」に限る)。
❷ 所属している協会名
❸ 居住している地域名(「○○」または「チーム○○」など)
❹ 在職及び在籍又は雇用契約関係にある会社又は団体名
※団体とは、NPOや協同組合などの法人、地方公共団体などの公共団体を指す。地域グループや少年団体など法人格を有しない団体名は使用できない。
❺ 在学している学校名(大学・専門学校等を含む)
※申込の時点で登録した「チーム名」と異なる表現での表示は出来ない。
※チームに対象となる選手が上記組織に1名以上在籍していること。
※複数の登録名をチーム名に含めることは出来ない。(「チーム東京・北海道」など)
※❹また❺の登録名を使用する場合は、必ず使用承諾の確認を行い、当該シーズン最初に出場する大会の申し込みと同時に、別紙様式「チーム名使用承諾書」を提出しなければならない(同チームが同 じ名称を使用する場合は、大会ごとに提出する必要はない)。
※同地域からの複数出場している場合のチーム名を差別化するために「ジュニア」「シニア」「A」な どの付属文字を使用することができる。省略文字には②から⑤に由来しない文字は使用できない。「○○カーリング協会」の省略には「C.A」、法人格のある「○○カーリングクラブ」の省略には「C. C」を使用することができる(差別化をするためだけに「C.C」を使用することはできない。)。
※②または③を使用する場合、「協会・府・県・市・町・村」の表示は省略できる。
つまり、「チームの代表者の名前」「所属している協会名」「住んでいる居住名」「所属している会社・団体名」「在学している学校名」のいずれかということです。
昨シーズンの日本選手権のチーム名を見てみると、
<男子>
1.チーム松澤
2.コンサドーレ
3.札幌国際大学
4.名寄協会
5.京都CA
6.長野県CA
7.チーム東京
8.チーム石村
9.北見工業大学
<女子>
1.東京都協会
2.LOCO SOLARE
3.北海道銀行
4.富士急
5.チーム札幌
6.チーム京都
7.中部電力
8.CP帯広
9.チームかわむら
となっていて、どのチームも当たり前ですが、規定通りとなっています。
私は、このチーム名の規定においても違和感を感じています。なぜか?あまりに色気がないと思いませんか?かつては、公式戦においても、割りと自由にチーム名をつけることができました。それがいつからでしょうか、おそらく日本が世界で戦えるようになった頃だと思いますが、限られる名前しか使用できなくなったのです。
私は、チーム名に関しては、印象的な思い出があります。それは30年ほど前なんですが、縁あって、帯広カーリング協会はカナダ・アルバータ-州のレスブリッジカーリングクラブと姉妹提携を結ぶことになります。レスブリッジは今年の4月に男子の世界選手権が開催された場所ですので、聞き覚えのある方も多いと思います。コンサドーレが活躍しましたが、日系人が多い街です。
で、その姉妹カーリングの調印のために、丁度その年の「日系カーリング大会」がレスブリッジで開催されるということで、特別参加することになりました。主たる目的は、調印式への参加ですが、男女1チームづつ作り、帯広から15名ほどがレスブリッジに行きました。
日系カーリング大会は、スリーノックダウン方式(3回負けると敗退)のトーナメントだったと記憶していますが、我々は男子が「グリーンウェーブズ」、女子が「レッドビーンズ」というチーム名で登録しました。当時、チーム名のつけ方は、日本においてはそれが普通だったからです。ところが、大会に出ると、どのチームもスキップの苗字がチーム名になっていました。
ですから、参加していた多くの日系カーラーの方から、なんでそのようなチーム名なのか聞かれました。スキップ名が当たり前だったので、不思議だったんでしょうね。でも、中にはそのような名前の方が面白いな~というカナダ人の方もいらっしゃいました。
私は正直、カーリング場のスコアボードのチーム名を見て、失礼ですが、カナダってセンスないな~と、その時は思いました。あまりにも当たり前で、もっと遊び心のあるチーム名の方がいいのではと感じました。まるで、選手名簿のようなチーム名がしっくりきませんでした。
その後、だんだん日本のカーリング界も本格的になってきて、チーム名もカーリングの聖地「カナダ」に見習うようなチーム名になってきました。実は、私は、40年カーリングをやっていますが、失われた10年というのがあって、40代のころは年間数試合する程度で、あまりカーリングに関わっていなかった時期があるんです。50代の半ばからまた復活するんですけど、カーリングの世界にもどってきてまず感じたのは、シューズやブラシの道具の変化、ルールの変化、ストーンのウエイト(スピード)チェック等の進化もありますが、チーム名がシンプルになっていてとても意外な感じだったのを覚えています。
現在、このシンプルなチーム名がグローバルスタンダードなのかもしれませんが、私はイケてないと思っています。不謹慎なネーミングは排除すべきですが、もっと自由であっていいと思います。
普段、私が所属しているチーム名は「ノーザンライツ」といいます。帯広では協会創立のときからある唯一のチームです。でも、この名前は公式戦では使えないので、公式戦のときは地域名である「TOKACHI」を使用しています。初期の頃は、公式戦もこの「ノーザンライツ」を使っていましたし、現在でも、帯広選手権、道東選手権まではこの名前を使っていて、北海道選手権からは「TOKACHI」というチーム名にしています。このようなチーム名の使い方は、全国でも様々なところでみられる傾向だと思います。
私は、この自由につけたチーム名の大会の方が、華やかさ、楽しさがあると感じています。なんで、北海道選手権、日本選手権になると、事務的な冷たいネーミングになるのか、よくわかりません。もっと遊びごころがあってもいいんじゃないでしょうか?
たとえば、野球の場合、巨人はジャイアンツですよね。監督が原さんだからといって、チーム原ではありません。日本ハムも、チーム栗山ではなくファイターズです。大リーグではニューヨーク・ヤンキースですし、NFLではダラス・カウボーイズですし、NHLはピッツバーグ・ペンギンズですし、レアル・マドリードのレアルは「王の」という意味だし、NBAの八村塁選手が入ったチームはウィザーズです。そのほうが断然いいですよね。プロの世界は感動を売るビジネスですから、それに近づくためそのようなネーミングにしているわけです。
それにひきかえ、なんということでしょう(ここはビフォー・アフターのトーンで)、カーリングのチーム名の地味なこと。ぜんぜんイケてません。私は、地域が好きで、地域名を入れたいのであればそれでいいと思っています。スキップの名前をつけたいのならそれでいいんです。すすんでそうしているわけですから。私たちも、なつぞらの十勝が大好きだから「TOKACHI」にしているわけです。でも、限られた選択肢のなかからネーミングするのと、自由な中からネーミングするのでは、同じ名前でも全然違うと思っています。それは、大切なプロセスが、違うからです。
私は経営コンサルタントというのを生業にしています。専門はマーケティングとビジネス・サイコロジーなんですが、マーケティングの世界においてネーミングというのはとても重要な位置を占めます。単なる区別するためのものではないんです。1つだけ例をだしますね。ちょっと下の図を見て下さい。これは、ブランド要素のインパクです。つまり、商品やサービスが売れるのになにが一番影響を与えるかという調査結果です。
これを見てもらえれば分かりますが、断トツでネーミングですよね。だから、コンビニなんかでは、商品のネーミングにはとても気を使います。どんなにおいしい商品であっても、いい商品であっても、ネーミングが悪ければ売れません。商品名を甘く見てはいけないのです。
これをカーリングにあてはめれば、チーム名が商品名にあたります。もちろん同じレベルで扱うことはできませんが、話半分だとしても、そのネーミングの重要性がわかると思います。どんなに美味しくても(どんなカーリングの技術が高くても)、ネーミングがよくなければ、感動は減価します。マクドナルドさんが、ハンバーガーのネーミングを募集するキャンペーンの裏には、このような要素があるのです(もちろん他にもSNSで拡散してもらい知名度を上げるなど、いろいろ裏には戦術が隠れています)。
さらに、ネーミングをつける際はいくつかのポイントがあります。専門的にはいろいろありますが、ここはシンプルにして言うと、以下のような点になります。
●インパクト
●コンセプトとの整合性
●憶えやすさ(視覚力、音感も含む)
●誤解・曲解の可能性はないか
実はこれらのことを皆さん真剣にやっているケースがあります。それは、子どもの名前です。ご両親や親戚の方は、ホント真剣にこれらのポイントを考えながら名前をつけていますよね。それと同じです。チーム名ってそれくらい大切なんじゃないでしょうか。
例えば、スーパーの野菜コーナーで商品をみているとき、以下の3つでどれに魅力を感じますか?
①新鮮トウモロコシ
②十勝産トウモロコシ
③朝採れのもぎたてトウモロコシ
おそらく、③を選ぶ人が多いのではないでしょうか?同じ商品でも、ネーミング1つでこれほど違うんです。でも、生産者なんかは、いい製品さえつくれば、後はスーパーでどんなネーミングで出そうがそれほど気にはしていないと思います。だけど、消費者は違います、気にします。ネーミングにおおいに影響を受けるのです。カーリングチームの皆さん、ちゃんと消費者(観客)の立場でチーム名をつけていますか?
このように、ネーミングは、プロセスをきちんとしてやらないと、相当マズイです。もちろん、これらは、マーケティングの観点からの話しなので、カーリングのチーム名にそのまま適応できるとは当然考えていません。ただここで言いたいのは、そのようなプロセスを組まなきゃならないネーミングに、制限を設けてはいけいないということなんです。
そして、そのプロセスを通じて、結果として、たとえば「チーム佐藤」ならそれで結構ですし、「十勝建設」でもいいのです。
若いチームや女子チームなんかは、自由にすれば明るくて活気のあるチーム名がでてくるかと思います。クールジャパンのキーワードの1つである「KAWAii」をテーマにしたネーミングも出てくるかもしれませんね。なんかワクワクします。
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