新たな絶景ポイントを探すべく情報収集を行っていく中で、様々な噂を耳にする機会がある。真実に基づくものや完全なデマに至るまで、その内容はバラエティ豊かだ。
1.襟裳町にあるハートの形をした湖(豊似湖)を筆頭に、2.豊頃町にある北海道の形をした池・3.勾玉のように見える摩周湖 等がその代表格として挙げられるが、その中にとても惹きつけられるものあった。
「ナイタイ高原上空から、反対側の然別湖が一望できる」と言う噂だ。
360度全方位による「誰も見たことのない」視点からの絶景ポイントを探している我々にとって、これ以上ない心躍るフレーズ。その噂を耳にした当時、とてもワクワクしていたのを覚えているが、同時に次の感情も湧いていた。
「本当だろうか」
___その信憑性はいかほどか。情報がこれだけ錯綜する時代だからこそ、情報に振り回されないために正しい情報を見極める力が必要だ。
地上から撮影したナイタイ高原牧場のイメージ
しかし酒の席で聞いたという状況を差し置いても、観光業に深く関わる方(上士幌町在住)からの情報である。信憑性と言う点では疑いようがない。
いつしかその視点からの景色を見たいと、そんな想いを抱くようになっていた。
ただ、「見たい」という想いだけでは、なかなかそのチャンスも訪れず、それから2〜3年の歳月が流れていた。
そんなある日、突然STV(札幌テレビ放送局)の番組制作スタッフと名乗る方から「取材をしたい」との依頼が舞い込んだのだ。
なぜ我々を…?
聞くと、過去に空撮写真の素材を提供した冊子からウェブサイトへ辿り着き連絡をした、という流れらしい。
素材提供をした冊子
まずは電話取材をいただく中で、「これから撮影するスポット、気になっているスポット等ありますか?」との問いに、思わず「ナイタイ高原の噂があり確かめてみたい」と応えてしまった。
「それ面白いですね!すぐにやりましょう!!」と、トントン拍子で物事が決まっていった。
ひゃー!
「大ごとになってしまった」と思った(汗)。
普段は立ち入り禁止となっているナイタイ高原山頂付近まで辿り着くことさえも、様々な壁が立ちはだかるのだ。多方面への説明と許可申請が必要となり、上士幌町役場N氏の協力も必要となる。
ひょんな軽口から始まったこの企画も、多くの方々を巻き込んだ一大イベントとなってしまったのだ。後悔先に立たずとはよく言ったものである…。
だが、こんなチャンスは滅多にないというのもまた事実。我々は、半ば心が折れそうになりながらも、各関係者のご協力を賜わりながら粛々と任務を遂行していった。
入念なシュミレーション・ロケハンにより撮影の精度を高めていく
入林許可証と撮影ポイントまでのルート計画図
そして迎えた撮影当日、まずは打ち合わせ風景を撮影するとの事で、事務所にSTVの番組制作班(ディレクター、カメラマン、音響スタッフの)3名が訪れた。
普段はどちらかといえばカメラを向ける方の側であるが、改めてカメラを向けられると、その緊張からか顔が引きつりスムーズに言葉が出ず、カミカミのボソボソ喋りになる。音響スタッフの方に「もう少し声を大きく…」と何度言われたことか。気合いを入れると演技くさくなるし…あっ、これが自分の限界なのだ。と思った(笑)
意外と取材撮影に慣れているのが弊社スタッフのS氏。
テンションは常に(低めの)一定だ。
翌日、ナイタイ高原牧場へ到着し、上士幌町役場のN氏と落ち合った。現地はあいにくの曇り空。しかもナイタイ高原付近を中心に、周囲を囲む様な濃霧となり、また心が折れそうになる。
濃霧が行く手を阻む!
今回は"立ち入り禁止区域"での空撮となるが、特別な許可をいただいて撮影が実現した。レストハウスから、更に上へ上へと頂上付近を目指す。
道幅は狭く角度も急で、いたる所で路肩が崩れている。
ぬかるみにハマりそうになりながら、まるで獣道のような道を登っていく。このまま雲の上へ出られないだろうか…。
こんな時こそ、↗ジムニーが欲しいと思った。
そしてなんとか頂上へたどり着いたが…
「真っ白じゃないか!!」
※写真はこの記事とは全然関係の無いただのイメージです ↗詳しくはこちら
これまで72カ所の撮影を行って来たが、「簡単には見れない風景だから絶景と言うのですよ 」と空撮の師匠から教わったのを思い出す。まさにその通り。これも絶景を撮影する醍醐味(楽しさのひとつ)である…と我々だけだとそう思うものの、今回ばかりは呑気にそうは言っていられない(汗)
後日再撮影という選択肢もあったが、この日の為にご協力してくださった方々の為にもなんとか撮影を成功させたい!いや、させねば!という想いで、霧が晴れるのを待つ。
待つ。
ひたすら待つ…。
そして5時間程、粘りに粘った末に、チャンスは訪れた。
雲が途切れ、一気に視界が開ける!(ナイタイ高原牧場全景)
結果的に言うと、今回の撮影では高度が足りず然別湖の姿をとらえることは出来なかった(※実はシュミレーションの時点で厳しいかもと相談していた)が、この条件のもとナイタイ高原の全景、加えて十勝平野が一望できたことはとても大きな収穫。
絶景の撮影には失敗も成功もつきものであるが、これも人生における修行のひとつである…という言い訳である。番組制作班の、その熱心な仕事ぶりにはとても感銘を受け、良い刺激を頂いた。最後までお付き合い頂けた事に感謝を申し上げたい。
わずかな満足感と、大いなる悔しさが入り混じる複雑な心境。さらに計画を練り、再挑戦の決意を胸に帰路につく。
帰りがけにナイタイ高原レストハウスで頂いたコーヒーと豚丼バーガーの味が忘れられない。とても美味しかった。また食べに来ようと心に誓う。
そして後日、再び撮影のチャンスを頂き、リベンジ!
前回の反省をふまえ、ドローンによる撮影高度をさらに上げるために新たに取得した許可認証を元に、対地高度300m付近(標高約1,250m)まで高度を上げる。(※国土交通省や空港事務所の許可承認なしに飛行できる最高高度は150mに制限されている為。)
↓その視点からの景色がこれ。
ナイタイ高原上空から反対側の然別湖が一望できる
噂は本当であった!
この時に撮影した360度VR動画を張り付けておくよ
(協力:上士幌町役場・十勝西部森林管理局)
※スマホでご覧の方は「Youtubeアプリ」が必要です。アプリをインストール後、下記リンクからご覧ください。※Wi-Fi環境・4K画質推奨
※PCの方は下記動画を再生後、画面内をグリグリ動かしてみてください。
この度のプロジェクト完遂にあたり、関係各位の皆様のご尽力には心から感謝申し上げます。