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平昌オリンピック女子カーリング、日本の銅メダルを決めた、あのイギリスのラストショットはミスだったのか?

シルバー

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あれから、8ヵ月がたちました。2月24日、カーリング女子の日本代表が3位決定戦でイギリスに勝利し銅メダルを獲得しました。日本がオリンピックでメダルをとったのは、カーリング史上初めてのことです。
イギリスの最後の一投は、TVのアナウンサーも叫んだように「ミスショット」ということで、各メディアも伝えています。私はこの「ミスショット」という言葉に違和感を感じました。ミスショットということは、明らかに間違って投げたということだと思います。確かに結果はそうなりました。しかし私はあれはミスショットではないと思っています。なぜなら、私も同じ立場なら、同じようなショットを意識的に投げたからです。

イギリスの最後の一投(ラストロック)を投げたのは、スコットランドのイブ・ミュアヘッド選手といいます。ミュアヘッド選手の説明をちょっとだけすると、2007、2008、2009年の世界ジュニアカーリング選手権のチャンピオンで、エリートクラスでも2013年に世界チャンピオンになっています。まさに、10年に1人といわれる天才カーラーです。
私が初めて彼女のことを知ったのはバンクーバー五輪のときです。スコットランドといえば、カーリングの母国。多くの素晴らしいカーラーを生んでいるのですが、そんな中でなんと19歳でイギリス代表のスキップを努めました。当時の日本代表との激戦は、テレビで実況生中継され、一躍話題を集めました。

私はそれ以来、ミュアヘッド選手に注目してきたのですが、そのハリウッドスター並みのルックスのみならず、ギャンブルを厭わないチャレンジングな戦法にすっかり惹きつけられました。バンクーバーオリンピックの時のイギリスチームにはケリー・ウッドという選手が出場していました。そのウッド選手は経験豊富で実積もあり、すでに世界的に有名な選手でした。本来であればスキップをやるべきレベルの選手です。その選手を差し置いてスキップを努めるということは、スコットランドが国を挙げて彼女(ミュアヘッド選手)を特別な選手として育てあげたかった証左なのかもしれません。日本でいえば、かっての女子バレーの中田選手(現女子バレーの監督)のようなカリスマアスリートなのです。

ですから、イギリスは平昌オリンピックでも優勝候補の一角でした。私は、この五輪において、女子カーリングで準決勝進出するのは、カナダ、スイス、スエーデン、イギリスが本命だと思っていました。そこに日本がどう食い込めるか。時差もないし文化も近い韓国ですから、そのアドバンテージを活かせば、この4チームの1つを食えるかもと感じていたのです。結果はカナダ、スイスが落ちるという大番狂わせ。絶対王者のカナダが落ちるとは想像もしていませんでした。今回カーリングは男子もカナダがメダルをとれないという、ちょっとした事件だったのです。今年のサッカーのW杯でいえば、ドイツが予選通過できなかったような事態だったのです。

まず、ミュアヘッド選手が、そんじょそこらの選手ではなく、とんでもない選手ということを分かってほしいと思います。これは私個人的な思いですが、スコットランドは残りの3人の選手が本来の実力を発揮すれば、平昌でのメダルの可能性が高かったと思います。私がTVを通して見た限りですが、リードからサードまでのパフォーマンスが本来の調子でないように感じました。
ちなみに、ミュアヘッド選手の憧れのカーリング選手は、グレン・ハワード(カナダ)さんなんだそうです。ハワードさんは、実は今回のイギリスチームのコーチだったんです。最初、なんでカナダ人のハワードさんがスコットランドのコーチにと思ったんですが、そのようなこともあったのかもしれませんね。それだけ、ミュアヘッド選手の思いを国もバックアップしたのだと思います。

さて、ここから、なぜあのショットがミスではないと私が思うのかの説明をしたいと思います。
カーリングに限らず、スポーツはその場面だけでなく、その試合のはじめからの流れというものが影響します。つまり、あのショットには大きな伏線があるのです。

特に影響があったのは、9エンド目のミュアヘッド選手のラストロックです。思い出してほしいのですが、あの9エンドめの藤沢さんのラストショットがうまく相手の石の裏に回り込み(カムアラウンド)ました。そこで、ミュアヘッド選手はラストロックを持っていたこともあり、ガードの役目を果たしていた自分の前の石と、裏に回り込んだファーストの石を同時に出す『ダブルテイクアウト」狙いに行きます。
そのときの指示となるブラシの位置は前の石の真ん中を狙っていますので、ほんのちょっとだけ曲がることを意識してミュアヘッド選手は石を投げます。ほんのちょっと曲がることを意識というのはそのままストレートで前の石に当たると、ファーストになっている日本の石にノーズ(どんぴしゃ)であたり、自分の石がのこり1点とることになるからです。

試合の終盤、イギリスとしては、ラストロックをもっている時には2点以上の複数点をとりたいところですので、1点では次エンド(10エンド)にラストロックを持てないのが不安なんです。ですから、9エンド目はブランク(点数が入らないエンド)にして、ラストロックをもって同点でラストエンドに行きたかったのです。
ところが、石は思った以上に曲がりました。この時のミュアヘッド選手が投げた石のスピードはホグライン間8.7秒でした。この8.7秒というのは、通常でわれわれがノーマルウエイトいう速い方のスピードなんです。もちろん、男子では5秒代、6秒台というとんでもないスピードでなげることもありますが、女性では速い方だと思います。

実は、ミュアヘッド選手というのは、この速いスピードの石を投げるのを得意としています。ですから、7秒台前半のスピードでもなげることはできるので、この8.7秒というのは、かなりコントロールして、自信をもってなげたと思います。それが想像以上に曲がって日本が1点をスチールします。
この場面、ミュアヘッド選手は自分のチームが1点で終わることがあっても、スチールされることはまったく考えていなかったと思います。それだけにこのショットは相当、印象に残ったと思います。

そして、問題のあのラストシーンを迎えます。ミュアヘッド選手のラストロックを投げる前の藤沢選手の1投は、これも思ったより曲がり前の石にあたりセンターラインのちょっと右側で留まりました。で、その時の指示していたブラシの位置(サードの吉田選手)は下の写真です。

石5個分曲がることを想定しての位置に指示を出しています。それでいて、藤沢さんのラストショットは前の黄色の石にあたってちょっと横にづれて止まっているのです。

そして、あのシーンを迎えるわけですが、イギリスは1点すでに取っているのに、なぜドローで真ん中を狙わないのかという意見がスポーツ番組をはじめいろんなところでありました。でも、それは相当難しいです。というは、藤沢さんの石が6個分くらい曲がっていました。そしてその石がちょっと横にづれて止まりましたので、真ん中にドローするためには、もし藤沢さんと同じくらい曲がると考えると、投げる指示のブラシの位置が、サークルの外になります。
そうすると、下図の右上の赤い石をすれすれに通りますし、ましてや使っていないラインですので、ウエイト(石のスピード)の判断がとても難しいのです。使っていないので重たいコースと判断してちょっとでもスピードを上げれば、前の赤い石に当たる可能性がありますし、抜けてもスルーする可能性もあります。

それ以上に、ラストロックを投げる立場として一番いやなのは、ドローを狙って思った以上に曲がり、日本のセカンドの石をプッシュしてファーストにしちゃうことなんです。そう考えると、ドローの目はまずないと思います。

私はオリンピックに出る選手とはレベルもラベルもちがいますが、スキップとして最後の勝負どころは、可能な限りインターン(時計回り)のドローで勝負に行きます。このシーンはまさしくその場面なんですが、そんな私でも、様々な状況を考えるとドローの選択はしないです。
特に、10エンド目のラストロックですから、氷りのペブル(粒)もなくなり、ドローの際の曲がりは予測がつきにくいです。とにかく世界レベルのアイスは曲がるように作られますので、そんな状況は彼女たちは十分把握していると思います。
さらにさらに、オリンピックのメダルがかかっている一投ですから、知らず知らずアドレナリンがでて、石のスピードが思った以上に出ることも考えられるので、ドローはホントにむずかしいです。

その判断、それと、ミュアヘッド選手が速い石を得意にしていることもあり、セカンドの日本の石に当て、自分のファーストに飛ばし、当てた日本の石と、三番目の日本の石を出して、2点をねらいに行きます。そのさいミュアヘッド選手として考えることは、速い球でチップさせるか、コントロールしたスピードの石でちょっと厚めに当たるかの判断です。
ここまでのアイスの状態を見ると、想像以上に曲がっているので、ちょっとでもウエイト(スピード)をおとすと、サークルの5.5の位置にある前の黄色にあたる可能性があります。それで、速い石を選択したのだと思います。この判断に私は、間違いはないと思います。

前の石に当たっても、1点とれるのだからいいのではと思う人もいるかと思いますが、延長で、ラストロックがないというのは相当はハンディになります。ですから、イギリスとしてはなんとかこのエンドで決めたかったと思います。

そして、そのショットを狙いにいきます。で、指示しているブラシの位置は当てる石の端ですので、かなり速い石の指示です。ミュアヘッド選手はその思惑通り、ホグライン間8秒というスピードでなげます。
ところが、本橋選手が言っているように、投げた瞬間、コーチ席がちょっとざわつきます。それは、指示よりもちょっと外に出たからです。それが結果的にみんながミスショットと言われる結果になるわけですが、私が注目したいのは、ミュアヘッド選手は意図せず指示よりもちょっとそとに投げてしまったのか、意識して外に投げたのかです。
もしそれが、意図せず外にでたのならミスショットと言ってもいいと思いますが、私は意識して、指示より外に投げたと判断しています。
というのは、速い石で投げるいじょう、厚くあたっては日本の2番目、3番目の石も出ますが、自分のファーストの石もでてしまいます。それだと1点のみです。ですから、とにかく薄く当てたいと思っていたと思います。そこに、9エンド目のあのラストロックのイメージがでてきます。あのスピードで思ったよりまがった。だから、指示はあそこだけど、気持ちちょっとだけ外に出そうって考えていたと思います。

えっ、じゃ、最初から指示のブラシの位置をもう少し石から離せばよかったのではと思うでしょうね。ここが、実は重要なところなんですが、カーリングは見ている観衆と実際にやっている選手の感覚、コーチ席と実際にやっている選手の感覚、さらにはスキップと他の3人との感覚にズレがあるんです。
この中で、スキップと他の3人とのズレは、試合に影響を与えること大なので、通常はコミュニケーションで埋めていきます。ところがスキップはあえて、そのズレを他の3人に言わないことがあります。たとえば、試合によっては投げるストーンがちょっとナロってしまう(内側にでてしまう)、あるいはワイドに出てしまう(外側にでてしまう)というのがある場合、試合中選手には言いません。さらに、作戦面や氷の状態でも、悩みそうな場合には、そのズレを言わず、自信をもって指示通りに投げれば大丈夫だよというメッセージをなげかけます。

とにかく、ある程度のレベルになれば、技術的にどうの、作戦がどうのというより、スキップの指示が信頼できると思ってもらうことの方が重要なんです。そう思ってもらったほうが、パフォーマンスの精度は上がります。
ですから、ミュアヘッド選手は、ず〜と石を受けていて、リンクの状態で感じるものがあったのだと思います。今のこの状態であれば、あの指示の気持ちワイド気味になげれば、丁度いくんだという感覚が。それは指示通りになげるよりも、気分的に理解できるという感覚だったと思います。この感覚ちょっと分かりにくいと思いますが、直観に近いものです。だから、まわりは一瞬、おっと思ったと思いますが、自信をもってあの石をなげているんです。
で、結果はあのとおりなんですが、あと1cm曲がれば行ったという人もいますが、1cmだとちょっと厚いと思います。私は3〜4mm曲がれば行ったと思いますが、その3〜4mm曲がるかどうかは氷のコースによってホント微妙で、神のみぞ知るということです。つまり、思った通り投げたけど、結果は偶然なんです。そう、ミスショットではなく、偶然性が勝負を決めたのです。

私は、試合に一番影響するのは、技術的にはほぼ互角の場合、作戦でもテクニックでもなく、偶然性だと思っています。これは、カーリングに限らず、すべてのスポーツでいえることです。作戦は、作戦命の人には申し訳ないですが、勝敗への影響は頑張っても25%程度だと思います。それ以上に、精神的ポジティブや偶然性の方が重要です。
これは経験則で言っているのではなく、わたしなりのエビデンスがあります。私は経営コンサルタントを生業としていますが、カーリングにおては、カーリングの理論ではなく、経営に関する様々理論で試合をすすめています。結局、チームのマネジメントも経営のマネジメントも、基本的には同じなんです。
詳しいことは、今回は、省きますが、また、機会があれば、お話したいと思います。

そういう意味では、世のスポーツの解説者は、なにか結果論で話をしている人が多いな〜と感じます。みなさんは、どう思いますか?

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途中難しかったけど全体的にわかりやすい!

サムネイルの一番後ろに仙人がいるっ!

偶然性を味方にしたい!

スケートは足首がグニャグニャになるので全くやる気が無かったのですが、カーリングはやってみたい!!気がしてきました。

たしかに!大体のことが偶然かも。まだ一度も死んでいないことを、誇りに思っています。

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