午前6時。
車にカナディアンカヌーを載せ、必要な道具を次々と車に積み込む。
忘れ物はないか?念の為アレも持ってくれば良かったか?などとあれこれ考えながら、釧路の少し上に位置する標茶町の塘路湖へ向けて車を走らせた。
カヌーを乗るのに必要な技術を教えてもらうために、私がカヌーを買った「カヌーショップヒライワ」店主の平岩さんとそこで9時に待ち合わせていた。
車に積んであるナビゲーションが古いため、途中ナビ上の空を飛んでしまい少し迷わされてしまったが、なんとか約束の時間に到着することができた。
そこにはすでに平岩さんが到着していた。今日はカヌーショップの店主平岩さんではない。講師の平岩先生、いや、平岩師匠だ。
『師匠!よろしくお願いします!』
『はい、お願いします。いやー寒いね』
この日の最高気温は5度。更にいつ雨が落ちてきてもおかしくない厚い雲が空を覆う。
挨拶も程々にお互いの車からカヌーを下ろし早速準備を始める。
駐車場から湖のすぐそばまで、各々のカヌーを担いで運ぶ。
塘路湖ではカヌーツアーも頻繁に行われている様だが、この日は寒すぎたのか私と師匠の二人だけ。貸し切りだった。
軽く準備運動を終えてから陸上で、カヌーの性質、原理、安全、パドルの動かし方など中心に基礎を叩き込んでいただいた。
『こうですか!?』
『違う。こう!』
『こ、こうですか!?』
『そう、少し良くなってきた。はい、前向くの忘れてる!』
『あっ、はい!』
1時間半ほど陸で練習してから、ついに自分のカナディアンカヌーを水上に浮かべた。陸上では40kg程ある重いカヌーも水上に浮かべた瞬間、5kg位に感じるくらい軽い物体へと変化した。浮力って凄い。
そして師匠がカヌーの前席に乗り、緊張しながら私もゆっくりと後席に乗り込んだ。ちなみに2人でカヌーに乗ることを用語でタンデムという。
『浮いた…』
大人2人を乗せたカヌーはフワフワと水の上に浮かび、しかし想像していたよりもずっと安定感のある乗り物だということを実感すると、一気に楽しい気持ちでいっぱいに。陸で教わった漕ぎ方を全部忘れ無我夢中でパドルを漕ぎ出すと案の定、師匠から叱責が飛んでくる。
『舵効いてないよ。ちゃんとメリハリ付けて!』
『は、はい!』
『もっと一回のストロークを力強く!』
『は、はい!』
そこから私達は湖を縁取るようにカヌーを漕ぎ進めた。初心者がやってしまいがちなのは、湖に出てすぐに湖の中心に向かっていってしまうこと。もし転覆したら字のごとく取り付く島がないので復旧が難しいそうだ。
パドルを漕いでいるとライフジャケットが当たっている部分はポカポカと暖かいが、外気に触れている耳や顔は寒い。とても寒い。時折、小雨が落ちてきたが気にせず私たちは漕ぎ続けた。
『もう少し暖かくなったらこの辺はもっと緑で、花や動物も見れるようになるんだけどねー』
と少し心惜しそうに説明してくれた。少し風も出始めた頃、『それじゃ、一度戻ろうか』と師匠の一声で私達はカヌーを大きく旋回させた。
出発地点に戻り、もう一度おさらいをする事に。そこでGoProを持ってきている事を思い出し、師匠に撮影許可を取ろうとした。すると
『なーんだビデオ持ってきてるなら最初から撮れば良かったしょ。じゃーもう1度やろうか』
と言ってカメラの前に師匠が立ち…
『それでは、これからカナディアンカヌー講習を始めます』
と、カメラの前でこれまでの講習をアタマから再現してくれた。
『い、いいんすか!?』
な、なんてサービス精神。
(この動画が私の教則ビデオになりました)
説明中、師匠の長靴に水が入ってしまい『ちべてー』と苦笑いをするお茶目な1コマも。師匠の実演が終わると、本日のカヌー講習の総仕上げ「ソロ(1人)で乗る」。 私は教わったエントリー方法でカヌーに乗り込み、陸に残った師匠の指示に従いこれまでの操作方法をおさらいしていく。
・ラダーストローク(内当・外当)
・ブレーキング
・リバースストローク
・スウィープストローク
・ドローストローク
・スカーリング…
無駄に力が入ってしまい自分でもぎこちないのは自覚できた。師匠の指摘もあり課題をたくさん見付けることが出来たので、これからの練習で解消していきたいポイント。
そして昼を過ぎる頃、カヌー講習は終わりを迎えた。あっという間で本当に有意義で楽しい時間だった。
『カッコよくバシッと漕いでよ』
『ハイ、頑張ります!』
私は再会の約束をして師匠と別れた。
十勝までの帰り道。
身体に程良い疲労感を覚えながらハンドルを握る。これでようやく自由にカヌーが乗れると思うとワクワクが止まらなかった。だが、昨夜は興奮して2時間程しか睡眠が取れていないこともあり、眠気も止まらなかった。こんなこともあろうかと途中で眠くなった時のためにこんな物を買った。
『や、やるじゃねーか…』
「辛さ&濃厚最強クラス!!」は伊達じゃなかった。
『か、辛ぇーじゃねーか…』
複数枚口に含むとワサビパウダーが強すぎて悶絶。
『ヒーーーッ!ヒーーーッ!』
涙で前方が見えなくるほど辛い。痛い。
『誰だコレ作ったの!出てこい担当者っ!』
眠気と辛さ(痛さ)を交互に味わいながら車を走らせ続けていると、途中で桜が残る良さげな川を発見。
『おっ♡』
車を停め少しだけ釣りをした。別に釣りがしたかった訳ではない。たまたまトランクに釣り具が入っていただけ。たまたま良さげな川が現れただけさ。
小物ばかりだがキャストするたびに釣れるので、さっきまでの眠気は一気に吹っ飛んだ。
眠気覚まし痛みよりもアドレナリン。
(はい、ここテストに出まーす)
私は再び帰宅の路に付いた。(つづく)
ここでは、カナディアンカヌーを所有してさらには実際に水面を漕ぎ出すまでをレポートしていこうと思います。
つづきはこちら
15.「探せ!カヌーフィールド!湖で勝手にカヌー乗ってもいいの?」
■ 塘路元村キャンプ場
北海道川上郡標茶町塘路原野北8線169