職場の先輩と雑談をしているときに『釣りでも始めようと思んです』と軽~い感じで話したところ
『おぉ!マジか!何釣り?海?川?』
と、ものすごい勢いで話に喰いついてきた。
それまで知らなかったがその先輩は休日のほとんどを川か海で過ごす生粋の釣りキチだった。
(ここはカヌーレポートのページです)
・ルアー(スプーン)で釣ってみたい
・ふらっと行ける近くの川で釣りたい
と勝手な理想を喋ったら、次の日『これ使いな』と言って今は使っていないというリールを持ってきてくれた。
先輩曰く「安物」だそうだが、それまで自分が使ったことのある玩具リールと比べると、動きがすごく滑らかだった。
早速、仕事帰りに最寄りの釣具屋に行って『これに合う竿はどれですか?』と店員さんに聞き、初めて自分で竿を買った。1万円程度の竿で釣具の中では決して高価な竿ではないが、選ぶのに2時間以上かかってしまった。お会計の際、『やっと決まったかい』と店員さんに笑われた。
それから時間を見付けては近くの川へ通う日々が始まった。
最初は全く釣れず、釣り上げる魚の数よりも、川岸や川底の障害物にルアーを引っ掛けてロスト(失う)する数が上回り、釣りに行くたびに財布が痩せていった。初めてウェーダー(胴付長靴)を買ってからは一気に行動範囲が広がり、釣れる魚の数やサイズも少しずつアップしていった。
(ここはカヌーレポートのページです)
こうしてこのリールのおかげ、いやこの先輩のおかげで「釣り」が私の新たな趣味として定着していった。
もちろん先輩にはカヌーを買うときにも相談に乗ってもらった。
実は「消えた赤いカヌー」のレポートで「友達」と称して登場した人物がこの先輩だ。
先輩は「釣り」に特化したフィッシングカヤックを私に激しく勧めたが、既にカナディアンカヌー1択だったので先輩の助言を聞かず、カナディアンカヌーを手に入れた。
私のカヌーもそろそろシーズンオフを迎える。『最後に誰か一緒にカヌーフィッシング行かないかなー』と頭の中で週末の相棒を探していたところ、ポッと先輩の顔が頭に浮かんだ。
なんと、まだ恩人の先輩をカヌーに乗せていなかった。
『暖かくなったら乗せますね!』と、約束したのが今年の2月頃。
で、いま10月末。
暖かいのを通り越してすっかり寒くなってしまった。
すぐに先輩に連絡してみると『行く行く!』と二つ返事。(あー×やっぱり待ってた?)
『何か必要なものあるか?』と聞かれたので、必要な道具をリストアップしたところ、ライフジャケットを含む道具を全て自前で持ってきた。やっぱスゲーよ先輩。
そして出発の日。
朝7時に先輩を迎えに行き、「ご奉公カヌー」へ連れ出した。
向かった先は、このレポートでもお馴染みの上士幌町・糠平の「元小屋ダム」。人目につかずゆっくりカヌーフィッシングが出来る安定のカヌーフィールドだ。
今年ここに来るのは3度目だったが、程良く増水していて湖のコンディションはこれまでで一番良かった。
釣りの楽しさを教えてくれてありがとう。
あなたのおかげで楽しい趣味が増えました。
そんな感謝の意をこめて、私は先輩が釣りがしやすそうなところに、静かにカヌーを移動させた。
気温も水温もまだ低い早朝はあまり釣れなかったので、とりあえず紅葉と景観を楽しみながらダム湖をカヌーで散歩。
『いいねー。心が洗われるわー』
先輩もご満悦の様子だ。
そして日が高くなるにつれて少しずつルアーに魚が反応しだした。
2時間ほどでニジマスやアメマス(ウグイもね)を2人で10匹ほど釣り上げたところで、急に先輩が
『よし!満足した!やめよう!』
と笑顔で言った。
『あまり釣れ過ぎると楽しさ薄れちゃうから、この辺でやめておこう』というのが理由らしい。釣れるものならここにいる魚全部釣り上げたいと思う私にはこの発想は無かった。
やっぱスゲーよ先輩。
そして予定よりも少し早く竿を仕舞って駐車場へ戻ることにした。
途中、上陸できそうなところを見つけたのでカヌーを停泊させ少し休むことにした。
少し冷たい秋の風が心地よくダム湖の上を通り過ぎていくなか、珈琲と甘い物を頬張りながら、ゆっくりと湖畔を眺める。紅葉が色付くダム湖で2人きり。まるでデート。おっさんずダム。
ともあれ先輩が満足してくれた様で良かった。
こうして「ご奉公カヌー」は幕を閉じた。
(つづく)
ここでは十勝でひっそりとカナディアンカヌーを始めた記録をレポートしていきます
つづきはこちら
36.カナディアンカヌーはじめたら実際いくらかかかる?(お金の話)
■元小屋ダム
北海道河東郡上士幌町黒石平