平昌オリンピックですっかり市民権を得たカーリング。4年に1度、毎回盛り上がるのですが、すぐ熱は冷めます。しかし、今年の盛り上がりはいままでになかったものでした。メダルを獲ったということが大きかったのでしょうが、ひたむきにがんばるLS北見の姿に心打たれるものがあったのだと思います。
数年前までは、カーリングって男子もあるの?とよく聞かれました。シンクロナイズドスイミングや新体操のように女子が主流のスポートだと思われていたのです。というのも、いままで男子は実力でオリンピックに出場したことがありませんでした。唯一出たのは、長野オリンピックですが、開催地枠での出場でした。もう、20年も前のことですから、男子の影が薄なるのも仕方ありませんね。
それに引き換え女子は、毎回のように出場し、「カー娘」として4年ごとに話題になりました。そこで中心となっていたのは、常呂町出身の女子選手たちでした。かっては北海道のチームが抜きん出ていたカーリングですが、最近は本州勢も実力をつけ、女子であれば、「中部電力」「富士急」などはワールドクラスだと思います。私はこの2チームと戦ったことがありますが、とくに「中部電力」は今後「LS北見」や「北海道銀行」の強敵になると思います。
男子であれば、平昌オリンピックに出場したSC軽井沢が抜きん出ています。ただ、オリンピック後2人メンバーが抜け、今シーズンはチーム活動がありませんので、実力的に現在の男子のトップはSC軽井沢といい戦いをつづけてきた「4REAL」でしょう。この「4REAL」は、もとSC軽井沢にいた清水徹郎選手も加入して、8月1日に「北海道コンサドーレ札幌」として再スタートしました。
Jクラブとカーリング界の連携は史上初の有意義な試みで、地域性が強く出るカーリングという競技と、「北海道とともに、世界へ」というスローガンを掲げるコンサドーレの思惑が一致した格好です。といっても、主将の阿部選手こそ勤務先はコンサドーレ北海道スポーツクラブですが、他のメンバーの所属先(勤務先)はバラバラです。それぞれ勤務あるいは通学しながらトレーニングを重ね、合宿や遠征は職場や学校に理解を求めて敢行することになります。
男子で「北海道コンサドーレ札幌」に対抗するチームとしては、昨シーズン日本選手権を制した「チームIWAI」です。このチームは帯広畜産大学のカーリング部OBが中心となっているのですが、今シーズンは「札幌国際大学」としてチームを組んでいます。「北海道コンサドーレ札幌」と「チームIWAI」の2チームは、9月に開催される代表決定戦で日本代表の座を争うことになっています。
ここで、カーリングでオリンピックに出るにはどんな流れになっているのかを説明します。日本には北海道カーリング協会の他、東北6協会、関東6協会、中部3協会、西日本6協会があります。それぞれの地域で予選を行い、日本選手権に出場するチームを決定します。例えば、帯広のチームであれば、まず帯広選手権(プレスカップ)で上位4チーム以上になると、道東選手権に出場することができます。この道東選手権で優勝すれば北海道選手権に出場でき、北海道選手権で上位3位になれば、原則日本選手権に出ることができます。
そして、日本選手権で優勝すれば日本代表となります。よく、サッカーや野球のように、日本代表は優秀な選手を集めて混合でチームを結成するのですか?と聞かれますが、世界中のカーリング界ではそのような代表の選び方はほとんどなくて、チームとして優勝すれば、そのチームが代表となります。つまり、いい選手を集めて強いチームをつくるというよりは、「チームとして強い」チームを選ぶといったカタチです。
日本代表になると、毎年11月か12月に開催されるパシフィックアジアカーリング選手権(PACC)に出場することになります。この大会で、準優勝以上であれば、世界選手権への切符をつかむことになります。今シーズンから世界選手権のチーム数が増えそうなので、3位でも世界選手権出場の可能性はあります。
このパシフィックアジアカーリング選手権(PACC)はかつて日本チームの鬼門となっていました。今は、韓国、中国がライバルなのですが、この2ヵ国がまだカーリングに参加していない時代、オーストラリアが強豪でした。オーストラリアは国籍はオーストラリアですが、実はカナダ出身の選手が出場してきます。カナダはカーリング界では断トツの実力を持ち、質量ともにカーリング大国です。卓球の中国、サッカーのブラジルのような感じです。
この当時、オーストラリアにミルキンというとてもいいプレーヤーがいて、その壁を打ち破ることができず、世界選手権への道はとざされていました。その頃は、パシフィックアジアから1チームしか出場できなかったのです。まだオリンピックがない時代ですから、世界選手権は夢の舞台でした。私たちもビデオでみるしかなくて、すごい世界だな~と思ったものです。その夢の舞台、世界選手権のことを皆は「シルバーブルーム」と呼びました。優勝するとシルバーのブルーム(ほうき)をあしらったトロフィーがもらえるからそう言われていたのだと思います。映画のアカデミー賞をオスカーというのと同じですね。
個人的な話になりますが、わたしの会社名はそこからもじって「シルバーブルーム」とつけています。シルバーブルームにはその他の意味もあるのですが、なんともミーハーな会社名かもしれませんね。
ちなみに、そのミルキンという選手は、いまオーストラリアのシニアチームのスキップをやっていて、私たちも世界シニアカーリング選手権で2回ほど戦いましたが、とてもいい選手でした。また、ミルキン選手は世界カーリング協会の副会長でもあり、平昌オリンピックの女子カーリングの表彰式でメダルを渡していましたね。本業はIT会社の社長のようで、カネも力もあると聞いたことがあります。
さて、世界選手権に出場すると国ごとにポイントがもらえます。1位: 14、2位: 12、3位以下は順に10、9、……、2、1というようにポイントを取ることができます。そしてこのポイントが重要で、オリンピックの直前の2シーズンの合計ポイントの多い国からオリンピックの出場権を与えられます。たとえば、平昌オリンピックであれば2016年と2017年のシーズンの合計ポイントが多い10ヵ国が選ばれたということになります。日本は女子が12ポイントで8位、男子が15ポイントの4位で平昌オリンピック出場を決めています。この時女子がギリギリで、心配されましたが、なんとかクリアできて、今回のLS北見ブームにつながっています。
このように、オリンピックへの道は、どんな競技もそうでしょうが、厳しいモノがあります。とにかく重要なのは、世界選手権に出て、ポイントを重ねることです。とくに北京を目指すのであれば、2020年と2021年のシーズンが重要ということになります。
カーリングがオリンピックの種目になってから、一気に知名度も上がり、カーリングの面白さをしってもらえたことは、とてもうれしく思います。40年近くカーリングをやってきましたが、まったくのマイナースポーツで、リンクもアウトドアで1ヵ月程度しかプレイできない時代を長らく過ごしてきましたので、この注目度は信じられないくらいです。
かってサッカー少年でもあった私は、生きている間、日本がW杯に出ることはないと思っていました。50年前、W杯に出られるチームはわずか16チームで、アジアからは1チームだけでした。それが、今年もそうでしたが、毎回のように出場し、それだけでなく日本でW杯を開催するなんて信じられない出来事です。私自身のことでいえば、シニアとはいえ、日の丸のを背負い、シルバーブルームと言われていた世界選手権に6回も出場できたことは、これまた自分でもビックリです。
私は、現在、経営コンサルタントをしていますが、会社の経営者の方にいつもアドバイスする言葉があります。それは「AKB」です。つまり「あたりまえのことを、継続することに、Bestをつくす」です。そんな大げさなことでなくても、小さな積み重ねの継続力(グリット)が会社を変えるのです。それと同様に、スポーツの世界であれ、我々の人生であれ、やり続けることが成功に近づく一番のポイントなのだと思います。
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