以前、『美味しい七味唐辛子がある』というタレコミがあり、紹介した上士幌町にあるスパイス専門店「クラフトキッチン」。
この度、リニューアルオープンしたとの一報を受け、上士幌へ向かった。
新しい店舗は、前の店舗より1km程西に移動。 『はげあん診療所』さんの隣にあります。
店主の齊藤さんが出迎えてくれた。
お店の棚にはたくさんの種類のスパイスが並んでいた。
「少し種類増えましたか?」と、尋ねると「少しだけ増えましたね」と言いながら、新商品を10種類以上も紹介してくれた。
今回、お店のリニューアルに伴い、ロゴマークやラベルを一新。 贈り物にも喜ばれそうな素敵なパッケージが施されている。
スパイスのラベルには、どの国のスパイスかが書かれてあり、「旅するスパイス」というお店のキャッチフレーズにも納得。
さて、今日はどのスパイスを連れて帰ろうか。
前回、「七味唐辛子(柚子)」を購入する際に迷った「七味唐辛子(みかん)」にしてみようか。 それとも日本を飛び出して、肉料理に合いそうなアメリカ大陸の「スパイシーグリルバーベキューミックス」辺りを攻めようか。 いや、待てよ。 昔、友達と旅行したタイに思いを馳せながら、「タイ風ハーブ&ココナッツミックス」という選択も捨てがたい。 んー。 どうしよう。 どこに行こう…
散々迷った挙句、
「あの…なんていうか一番人気ではないけれど、実はコレがおすすめ! みたいな、ニッチなスパイス…あります?」
という、無茶な注文に
「あ、それならコレがお勧めです!」
と、数種類のナッツとスパイスを調合して作る「デュカ」という中東のスパイスを勧めてくれた。 なんとスパイスなのにおにぎりに合うらしい。
全然想像付かない! よし、今日はこれにしよう!
今回、リニューアルした店舗にはスパイスを販売するショップはもちろん、 スパイスを調合するスパイス工場、 厨房、 そしてカフェスペースがある。 店内の窓からは大きな庭が望むことができ、 そこにはヤギやニワトリ、 ガチョウなどがいるという(動物園?)。
そんな店舗の中で、 ひと際大きくスペースを使っているのが、 キッズスペースだ。 なんとこのお店にはキッズスペースが2部屋もある。
謎に広い…いや広過ぎるキッズスペースのことが気になり、訳を尋ねてみると
「少し長くなるけど、いいですか?」
との前置きのあと、「クラフトキッチン」のリニューアル、そしてなぜキッズスペースが2個もあるのかを話をしてくれた。
これまで、20年以上も幼稚園教諭など子供に関わる仕事をしてきた齊藤さん。
それまで暮らしていた東京を離れ、旦那さんと2人で上士幌町にやってきたのは6年前のこと。
縁も所縁もない地域での新生活だったが、何よりも驚いたのは、ここで暮らす子供たちの遊ぶ場所の少なさだったという。 特に子供の行動範囲が極端に狭くなる冬は、自宅から出ずに家族としか接しない子供たちがとても多いことを知る。
それは、幼少期(3~6歳)の子供の成長にとって、他人と接することの大切さを知る齊藤さんにとっては、放っておけないことだった。
そして齊藤さんは行動に出る。
そんな遊ぶ場所が限られているこの地域の子供たちのために、自ら「遊び場」を作ったのだ。
「遊び場」は週に1度、遊ぶテーマがある日もあれば、ただ集まって各々が自由に遊び、皆で一緒におやつを食べる場所。 学校や習い事とは違い、来たい人が来ればいいし、来たくないときは来なくていい、そんな自由な「遊び場」だ。
この「遊び場」には、アイヌ語の小さいという意味の「ぽん」と、大きいという意味の「ぽろ」を繋げて「ぽんぽろ」という名前を付けた。 小さな子も大きな子も誰でも参加していいよ、という想いが込められている。
そんな「ぽんぽろ」には齊藤さんの想いの通り、幅広い年齢の子供たちが集まっていった。
最初は、地域のママさんと2人で始めたこの「ぽんぽろ」だったが、活動していた2年半の間に協力者は6人にまで増えた。 クリスマス会を開いたときには参加者が60人にもなるほど、この地域に定着していった。
「ぽんぽろ」は、営利目的ではなかったので、協力者を含めて皆ボランティアで運営をしていた。 そしてどんどん規模が大きくなるにつれ、齊藤さんだけでなく協力者にも次第に無理がかかるようになってしまった。 齊藤さんは悩んだ末に自分たちで作り上げた「ぽんぽろ」を閉めるという決断をする。
齊藤さんのお店クラフトキッチンは小学校の通学路にあったので、下校中の子供たちが店の中に齊藤さんを見つけると、窓を叩いて挨拶をするのが日常となっていた。 それは「ぽんぽろ」が無くなってからも変わることはなかった。
そんな中、何人かの子供たちから「次のぽんぽろいつやるの?なんでやらないの?」と無邪気な問いかけを受けるたびに、胸を締め付けられる思いだったという。
ようやく子供たちが手に入れた遊び場を、結果的に自分が奪ってしまったことに、罪悪感でいっぱいだった。
「ぽんぽろ」が無くなり、ようやく自分のお店クラフトキッチンに専念することができる環境になったのだが、ずっと気持ちがザワザワしていたという。
そして、もう一度、本当に自分がやりたいこと、自分がやるべきお店のカタチを考えた齊藤さんは、ずっと思い描いている夢を実現するため、それができる環境で、この度リニューアルオープンすることにしたという。
私が不思議に思った広いキッズスペースと広い庭は、 子供たちが遊ぶには十分すぎる広さだ。 そしてもう1つのキッズスペースは、 うまく馴染めなかったりケンカしてしまった子が逃げ込める場所、 赤ちゃんが寝てしまったときにも使える場所として提供する予定だという。
大好きなスパイスを作り、そして小さな子供がいても一緒に働けるお店。 そしてここで暮らす子供たちが、自由に遊びに来れる場所。 このお店のロゴマークにもなっているリスと子リスには、そんな想いが表現されている。
そして話の終わりに、一枚の絵を見せてもらった。
そこには、優しいタッチではあるが齊藤さんの想いがハッキリと描かれていた。
そして少しずつ実現されているのがよくわかった。
たくさん話を聞かせてくれた齊藤さんにお礼を告げて、店を後にした。
「良い話だったなー」
と、家のある帯広方面に向かって車を走らせた。そして士幌を過ぎた辺りで、お店で何も買わずに帰ってきてしまっていることに気が付いた。
「一体何をしに行ったのか…」
(次は買います!)
最後にお店からイベント開催のお知らせ。
急ですが今週末です!
【イベント詳細】
イベントは主に店舗の前にある大きな庭(屋外)でやる様です。 けん玉パフォーマーや、移動本屋さんの鈴木書店さんも来るらしい!
■ クラフトキッチン
住所/〒080-1408 北海道河東郡上士幌町上士幌東3線239
電話/090-6040-9509
営業/10:00-16:00(不定休)
↗ https://tabi-spice.com/
※スパイス各種はネットからも購入できます